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BtoB企業が2017年に予算を割く見込客の獲得施策は「ブログ」と「ホワイトペーパー」

前回もB2B(BtoB)マーケティングに関する調査レポート結果を取り上げて考察を述べましたが、今回は見込客(リード)獲得施策にフォーカスした調査結果『BtoB企業のリードジェネレーション施策 実態調査レポート2017』を参考に、多くのBtoB企業で課題となっているリード獲得施策について考えたいと思います。

本調査は、BtoB企業のマーケティング・セールス、ブランド広報領域におけるコンテンツ制作を主事業としている株式会社ジャストクリエイティブ(所在地:東京都港区、代表取締役:佐賀井 大樹)が、日本に本社をおくBtoB企業の広報・販促、マーケティング担当者を対象にインターネット・リサーチを行い、2017年1月に公開したものです。

参考元:株式会社ジャストクリエイティブ 調査レポートの紹介ページ 

※公開されているインフォグラフィックの掲載は引用元の承認を得ています。リンク切れの際は、ご容赦ください。

調査対象は、BtoB企業の広報・販促、マーケティング関連の業務に従事している20~59歳の男女で、264件の回答を得られてます。
回答者の属性情報については参考元の調査レポートに譲りますが、傾向としましては、回答者のおおよそ半数が従業員数300名以上、年間売上高100億円以上の企業担当者となっており、特定の業種に偏ってはいないようです。

「2016年に実施したリードジェネレーション(見込客獲得)施策で効果が高かったのは?」あるいは「今後重点的に予算を割り当てたいリードジェネレーション(見込客獲得)施策は?」など、7つの設問でその傾向を分析しています。

それでは、私がこの調査結果の中で興味深く感じたポイントを3つほど挙げて、私見を述べたいと思います。

 

 ポイント1> オンラインではWeb広告を上回るコンテンツマーケティングの効果

[設問] 2016年に実施したリードジェネレーション(見込客獲得)施策で効果が高かったのは?

<オンライン施策のTOP3>
1位:ブログ記事/コラム [59.5%]
2位:Web広告 [58.8%]
3位:SEO [57.2%]

<オフライン施策のTOP3>
1位:イベント出展/展示会 [61.0%]
2位:DM(ダイレクトメール) [57.6%]
3位:セミナー [54.2%]

2016年に実施したリードジェネレーション(見込客獲得)施策で効果が高かったものを、オンライン・オフラインそれぞれで尋ねた結果のTOP3は上記の通り。

オンラインとオフライン施策それぞれで回答を求めているところが比較しやすくて良いですが、企業規模別の傾向がわかるような集計も公開してもらえると、さらに有益な考察ができたかもしれません。

オンライン施策の1位は「ブログ記事/コラム」と、わずか0.7%の差ではありますが、「Web広告」を上回ったのは興味深い結果です。時間軸で考えますと、一般的に「ブログ記事/コラム」によるリード集客&獲得は継続性が重要で効果が出るまで時間を要する取り組みといえますが、「Web広告」はより短期間で成果を求められる場合には有効なシーンが多いと思います。

仮に設問が「効果が高かったのは?」ではなく、「費用対効果が高かったのは?」と尋ねた場合には、その結果も異なるものになったかもしれませんね。

ちなみに、レポート結果の詳細をみると「eメールマーケティング」が50.0%で4位に入っており、保有の顧客・見込客リストに対するコンテンツの配信手段としては「eメール」が活用されているといえそうです。

一方、オフライン施策の1位は「イベント出展/展示会」となっており、他社の調査結果と同様に多くのBtoB企業におけるリード(名刺)獲得施策としては、セミナー開催とあわせて重要な取り組みになっているようです。

個人的に意外だったのは2位の「DM(ダイレクトメール)」で、BtoB事業においてどんな活用方法をされているのか、非常に興味をもちました。
あくまでも仮説レベルですが、ターゲット企業の規模や業種等でセグメントした対象にDMを発送し、4位に入っている「テレマーケティング」とあわせて担当者へのアプローチとアポイント獲得を狙った取り組みも少なくないだろう、と推測します。

BtoBにおいては、このオンラインとオフライン施策の双方を複合的に絡めて取り組めるかが重要な視点の一つではないかと思います。

 

 ポイント2> リードジェネレーション施策は『費用対効果の算出が難しい』

[設問] 各リードジェネレーション(見込客獲得)施策に対して、抱えている課題・問題点は?

本設問では、リードジェネレーション(見込客獲得)施策それぞれに対して抱えている課題・問題点の内、「Web広告/モバイル広告」と「コンテンツマーケティング」、「イベント出展/展示会」における共通点を切り出して、最も多くの回答を集めた『費用対効果の算出が難しい』という、BtoB企業の現状を確認できました。

一般的に、BtoBにおける見込客(リード)の売上への転換は、セールス活動を経て数ヶ月~1年、あるいは2年程度の期間を要することになるため、特定の施策がどの程度売上に貢献したかを算定するのは非常に難しいことだといえます。

しかしながら、施策個別のリード獲得単価(CPA : Cost Per Action / Cost Per Acquisition)や案件化率(案件金額)、受注率(受注金額)を適切にモニタリングすることで、費用対効果の傾向をとらえることは可能です。

個々に結果をみると、「Web広告/モバイル広告」では、

  • 広告効果が頭打ちになっている
  • 社内に人的リソース/ノウハウがない
  • コンバージョンしても商談(案件)に結びつかない

がいずれも回答率が高く、課題に感じている企業担当者が多いようです。

同様に「コンテンツマーケティング」では、

  • ブログ記事/コラムの企画・制作が難しい
  • 社内にリソースが足りていない
  • ホワイトペーパー/eBookの考え方や活用方法がわからない

「イベント出展/展示会」では、

  • 費用と工数が掛かる
  • 集めた名刺が商談(案件)に結びつかない
  • ブランド維持・強化の視点に欠けている

がいずれも回答率が高くなっています。

いずれにしましても、費用対効果の算出が難しいことを嘆いても仕方がないことです。
リードの獲得源泉(直近の獲得経路など)を社内のリード情報や案件情報に引き継がせて(反映させて)、案件の受注・失注までモニタリングすれば大枠の傾向は捉えられます。
(ただし、「SFA:営業支援システム」のようなIT活用は必須ですね)

正確性を追求するよりも、その傾向をいち早くつかんで改善活動につなげていく姿勢やアクションが重要ではないかと考えています。

 

 ポイント3> BtoB企業の多くが「ブログ」と「ホワイトペーパー」に予算投入

[設問] 今後重点的に予算を割り当てたいリードジェネレーション(見込客獲得)施策は?

<オンライン施策のTOP3>
1位:ブログ記事/コラム [28.8%]
2位:ホワイトペーパー [25.4%]
3位:SEO [18.2%]    ※インフォグラフィックの数値は記載ミスかと。

<オフライン施策のTOP3>
1位:DM(ダイレクトメール) [27.3%]
2位:顧客リストの購入 [26.1%]
3位:雑誌/新聞広告 [17.4%]

前述の2016年に効果が高かったオンライン施策「ブログ記事/コラム」は、2017年に予算を割り当てたいリード獲得施策として同様に1位を示しています。2位の「ホワイトペーパー」は、近年有効なリード獲得施策として認知・実行されつつある取り組みで、弊社でもご支援案件が増えつつあります。

2016年に実施したリードジェネレーション(見込客獲得)施策で効果が高かったものを尋ねた回答でも「ホワイトペーパー」は上位であり、選択肢の中で「実施していない」という回答率が一番高かったことも考慮しますと、『BtoB企業の中ではホワイトペーパーの活用はまだ少ないが、取り組んでいる企業の多くはリード獲得に効果を感じている』といえそうです。一方、オフライン施策の1位は「DM(ダイレクトメール)」で、1位と数%の差で「顧客リストの購入」が2位となっています。

近年、注力すべき企業(アカウント)を定義して、営業視点からマーケティングを設計する効果的な手法として、アカウント・ベースド・マーケティング(Account-Based Marketing)に注目が集まっていますが、ターゲットに対するDM送付やアウトバウンドはオフライン施策として重要な取り組みの一つだといえそうです。

Webマーケティング技術の進展により、IPアドレス指定によるターゲット企業へのバナー広告やFacebook広告なども可能となり、複合的な施策の計画・実行が求められつつあります

 

 さいごに

B2B(BtoB)マーケティングを実践する上で、見込客(リード)獲得施策は重要であり、避けられないテーマです。なぜなら、見込客の個人情報を獲得できないと能動的にセールス活動が行えず、受動的な対応しかできないからです。

また、営業活動における生産性向上を考えますと、よりゴールに近い(検討度合いの高い)お客様に対してのみ人的リソースを投下することが求められ、対象者を絞り込めるだけの母数を確保しておく必然性があります。

そのためには、見込客がどんな興味関心・課題を持っているのか? それらの課題解決に必要な情報は何か? などを考え抜き、コンテンツの開発や情報発信により一層注力していく必要があります。
今回ご紹介した調査結果も参考に、各社のマーケティング施策を再考されては如何でしょうか。

この記事を書いた人

堀首 裕芳
堀首 裕芳代表取締役/CRMシニアコンサルタント
FA機器を製造・販売する株式会社キーエンスにて、営業の面白さや難しさ、奥深さを知る。
その後、複数のベンダーでSFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係強化)領域のコンサルティングや営業管理職を務め、2011年にB2Bマーケティング株式会社を設立。
BtoB企業の顧客獲得や売上アップに貢献すべく、日々奔走中。

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