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情報システム担当者が関与する高額なIT製品/サービスの選定・意思決定プロセスを調査レポートから考察する

昨年(2023年)の5月、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行しました。それから8ヶ月以上が過ぎ、現状では「ウィズコロナ」から「アフターコロナ」に転換したと言えますが、2020年に入ってからのパンデミック(世界的な大流行)により、多くの人が非接触・非対面による日常生活や働き方を強いられることになりました。こうしたきっかけを受け、有無を言わさず浸透したリモートワークや在宅勤務ですが、生産性アップへの寄与を体感・実感したことで、アフターコロナにおいても多くの企業で新しい働き方が推進・推奨されている状況かと思います。

そして、こうしたリモートワークや在宅勤務の浸透によりニーズを高めたのが、業務向けのITツールや関連するサービスでしょう。代表的なものですと、オンラインでミーティングを行えるZoomやTeamsといったオンライン会議ツールをはじめ、SlackやChatworkといった円滑なコミュニケーションをサポートするビジネスチャットなどが挙げられます。その多くはクラウドサービスとして提供されていますが、同時に既存システムのクラウド化も進みました。
こうした状況下で、IT製品/サービスの検討や意思決定はどのように行われていたのでしょうか?

今回は、弊社のパートナー企業でもあるITコミュニケーションズ社が2023年10月に公開した『情報システム担当者が関与する高額なIT製品/サービスの選定・意思決定に関する実態調査』を参考に、国内企業が高額なIT製品/サービスを導入する際の購買プロセス(情報収集~比較検討~意思決定)において、情報システム部門を中心とした社内関係者の関与や意思決定に影響を与える要素・要因について考察したいと思います。

引用元:情報システム担当者が関与する高額なIT製品/サービスの選定・意思決定に関する実態調査|株式会社ITコミュニケーションズ 

※掲載した情報は引用元の承認を得ています。

なお本調査は、2020年7月~2023年6月までの3年の間に、年額300万円以上の費用を要するIT製品/サービス(※ハードウェアは除く、ミドルウェアを含む、提供形態は問わず)の意思決定や検討時の情報収集に関わった情報システム部門所属の会社員を対象に行われ、352名の回答を得た調査結果となります。

 

ポイント1> 高額商材の検討においては、営業担当者からの情報を重視する傾向に

[設問] IT製品/サービスを検討する段階で収集した主な情報源は?(すべて選択)

最上位は「営業担当者」で、4割を超える結果に。以前、 IT製品/サービスに限らず、『BtoB商材の購買行動に関する実態調査レポート2023』に同様の設問がありましたが、その際は24.3%で7番目に多い結果だったことを考えますと、失敗できない高額商材であることも関係してか、営業担当者から個別の要件に応じた情報収集が優先されていたと言えそうです。

そのあとには40.1%の「提供企業のWebサイト」と33.2%の「各種Webメディア」が続きましたが、これはデジタル社会の昨今においては必然的な結果として受け止めることができます。製品/サービス情報をはじめ、関連する話題に触れたビジネスコラムや導入事例といったWebコンテンツの拡充により、制約のある営業リソースに依存することなく、コミュニケーションコストの最適化を期待できます

また、32.7%の「セミナー(リアル・オンライン含め)」、27.6%の「展示会(リアル・オンライン含め)」も、検討時の情報源として参考にされているようです。この調査では、リアルとオンラインが含まれた選択肢となっていますが、SATORI社が公開した『BtoB企業マーケティング活動調査レポート2023』の調査結果に依りますと、「過去1年間で実施したマーケティング施策のうち、効果が高かったと思う施策は?」との設問において、「セミナー開催(ウェビナー)」の方が「セミナー開催(オフライン)」よりも1.5倍ほど高い結果を示しています。アフターコロナにおいては、リアルでのイベント開催に多少回帰している感はありますが、オンライン開催は今後、増えることはあっても減ることはない選択肢になったのではないでしょうか。

参照元:BtoB企業マーケティング活動調査レポート2023|SATORI株式会社 

ちなみに、それぞれ 8.0%であった「テレビ」や「新聞」に対して、17.3%の「雑誌/専門誌」は意外に感じた人も少なくなかったのではないでしょうか。ここでは、この雑誌/専門誌が紙媒体か電子版かをうかがい知ることはできませんが、売り手側としてターゲットにリーチしたい場合は、関連する雑誌/専門誌への認知施策も未だ有効だと考えてよさそうです。

 

ポイント2> 検討者側の要件やシチュエーションに合った情報源となり得るダウンロード資料にもニーズがあることを示唆

[設問] IT製品/サービスを検討する際に参考にした提供企業のWebサイトの主なコンテンツは?(すべて選択)

検討時に参考にした(参考になった)Webサイトの主なコンテンツとして、「製品/サービス情報」が 76.6%で最上位となり、次いで「価格/料金表」が 63.1%、「実績/事例情報」が 61.0%と続いています。
こうした「製品/サービス情報」や「価格/料金表」を参考にするのは当然の流れと考えられますが、やはり「実績/事例情報」も同様に重視されているようです。BtoBにおいては、立場の異なる複数の関与者が合理的な判断のもとで意思決定を下しますが、会社の予算を投下する責任が伴うため「他社や過去の実績を参考にして出来る限り(発注する)リスクを排除したい」という心理が働きやすい傾向も押さえておきたいポイントです。

以降、55.3%の「ダウンロード資料(製品概要・仕様書等)」と50.4%の「ダウンロード資料(ノウハウ集・レポート等)」が続きますが、検討者(見込客)側の要件やシチュエーションに合った比較的リッチなコンテンツにもニーズがあることを示唆していると言えそうです。
提供者(営業)側としても、接点を得られた見込客(リード)の情報を獲得するために、こうしたダウンロード用コンテンツの拡充と活用が推進されています。今回参照した調査レポートも言わば、ITコミュニケーションズ社が支援先のリード情報を獲得するために企画・制作したものであり、有益な情報を提供することで、自社の認知やニーズ喚起を期待した取り組みだと言えます。

 

ポイント3> 費用対効果や短期的・中長期的な成果を明示するなど、複数の関与者が理解・納得できる合意形成が課題に

[設問] 直属の上長、決裁者、特定のキーマンから理解あるいは承認を得るのに苦労した点は?(すべて選択)

IT製品/サービスの選定・決裁時において、理解あるいは承認を得るのに一番苦労した相手として「直属の上長」、「決裁者(最終承認者)」、「特定のキーマン」のいずれかを選択した回答者を対象に、その苦労した点を聞いた結果はグラフの通り。やはり、先述した「実績/事例情報」が重視されることと同様に、導入することによる費用対効果など、合理的に判断・意思決定できる情報を用意したり、立場の異なる複数の関与者が理解・納得できる合意形成が課題になるようです。

本設問の選択肢では、導入によってもたらされる「コストダウン・売上アップの定量試算」と「従業員の負担軽減(短期的な成果とも言える)」、「将来的な成長(中長期的な成果とも言える)」が具体化されていますが、検討側ではこうした情報を求めていると言えそうです。
一般的には、営業担当者による個別の提案書で具体化・明示されるもの(特に高額商材においては)だと考えられますが、より検討の前段階で、関連する情報がWebコンテンツやダウンロード資料に含まれていれば、案件(商談)化率の引き上げに貢献するでしょうし、営業活動全体の生産性アップにもつながると考えています。

上記の設問以外には、「検討時に情報収集源として参考にしたWebメディアは?」、「検討時に情報収集源として参考にしたSNSは?」といった点についても明らかにしていますので、詳細を知りたい方はこちらからレポートをダウンロード頂ければと思います。

 

 さいごに

今回は、情報シス担当者が関与する高額なIT製品/サービスの選定・意思決定プロセスにフォーカスした調査レポートを参考に、コロナ禍において、IT製品/サービスがどのように検討・意思決定されていたのかについて考察してみました。本調査レポートにおいては、高額(年額300万円以上)な商材に着目した調査であることが特徴的で、より多くの関与が伴いやすい高額商材の検討・意思決定プロセスの考察から示唆を得ることは、こうした商材の売り手側にとっては非常に有意義なアプローチではないかと思います。

こうした自社のターゲットに対して問題意識や気付きを与えつつ、リード獲得につなげようとする手段・施策として調査レポートの制作/活用に興味のある方は、気軽に弊社までご相談頂ければと思います。

この記事を書いた人

堀首 裕芳
堀首 裕芳代表取締役/CRMシニアコンサルタント
FA機器を製造・販売する株式会社キーエンスにて、営業の面白さや難しさ、奥深さを知る。
その後、複数のベンダーでSFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係強化)領域のコンサルティングや営業管理職を務め、2011年にB2Bマーケティング株式会社を設立。
BtoB企業の顧客獲得や売上アップに貢献すべく、日々奔走中。

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