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2.32025
KPI(重要業績評価指標)とは?マーケティング/セールスにおける評価指標の設定・活用について解説

唐突ですが、15世紀半ば~17世紀半ばまで続いた大航海時代では、多くの国家・民族が未知の新大陸発見を目的に、競うように大海原へと挑戦したといいます。
コロンブスのアメリカ大陸到達、さらにはマゼランの世界一周などで地球が球体であるということがようやく事実として認知されるまでは、円盤状の大地と海をドーム状の天空が覆っていると考えていた人も多かったと言いますから、「当時の海図や航海術でよく挑戦したなぁ」とあらためて思います。
仮に精度の高い海図が存在していたとしても、経度や緯度など現在地を正確に把握することができなければ、当然、目的地に到達することは容易ではなかったと思います。
これは企業経営でも同じようなことが言えるのではないでしょうか?
企業のビジョンに沿った目標に向けて経営・運営していくものの、先ほどの航路と同様に、目標とのギャップやタスクの進捗を適切に把握できないようでは、何が計画通りに進んでいないのか?どう計画を修正すべきなのか?手立てを失ってしまうからです。
また、当初は適切な戦略や計画を立てられていたとしても、航海上の天候と同様に、取り巻く環境や条件の変化によって戦略や計画の見直しを迫られるケースもあり、航海での目的地に対する現在地、すなわち企業目標に対する達成度(評価指標)を正しく把握することは、ビジネスの成功に向けて大変重要な要素なのです。
KPI(重要業績評価指標)とは?
冒頭、少しスケールの大きい話になってしまいましたが、マーケティングやセールス活動におきましても、目標達成や課題解決を実現するための戦略や計画を策定した上で、現状を定量的かつ客観的に把握できる指標を設定し、継続的にそのモニタリングと改善のサイクルを回していくことで目標達成を目指します。
ちなみに、KPI(ケーピーアイ)と呼ばれるキーワードは一般的になりつつありますが、KGI(ケージーアイ)は初めて聞く、という方もいらっしゃるかもしれません。
これらは通常以下のように訳されます。
KGI(Key Goal Indicator):重要目標達成指標
KPI(Key Perfomance Indicator):重要業績評価指標
これらはそもそも、バランスト・スコアカード(Balanced Score Card : 以下、BSC)と呼ばれる戦略策定フレームワークの中で用いられる指標が一般化したものですが、現在ではその方法論とはあまり関係なくビジネスシーンでよく使われるようになりました。
それでは、あまり馴染みのない方の理解を助けるため、実際には4つの観点(財務・顧客・業務プロセス・学習と成長)で評価・活用するフレームワークであるBSCですが、達成・評価指標(KGI/KPI)を活用する際の概念をサッカーチームの経営・運営に当てはめて簡易的に解説したいと思います。
例えば、J1リーグに所属するチームAの最終目標をリーグ優勝とします。
その最終目標を達成すべく、重要成功要因(Critical Success Factor)を必要な要素だけ設定します。ちなみに重要成功要因とは、目標と戦略の実現のために何が重要な要因となるかを明示(当然、大正解はわからないため、これまでの実績や仮説から設定)することです。ここでは詳細な説明は割愛させてもらいます(専門家の記事等をご参照ください)が、当然ながらこの重要成功要因の設定は重要なプロセスで、各種調査・分析や仮説から丁寧に落とし込む必要があります。
※現実的には、チームの財務面で余裕がないと必要な選手を確保できないでしょうし、その予算の確保にはスポンサー収入が重要で、そのスポンサー集めには優秀なスタッフや業務上のノウハウも必要・・・といったように、4つの観点で包括的に評価するBSCが広く認知・活用されている所以です。
ここでは、重要成功要因の一つとして「攻撃的なサッカーの実現」を掲げ、そのKGIを年間総得点60ゴールと設定したとします。そして、この60ゴールを達成するために日々実行、モニタリング、改善していくべき対象のKPIを設定するという手順となります。
例えば、「ゴールはシュートを放たなければ決まらない」ものですので、全試合の合計で300本以上のシュートを目指す、あるいは平均のパス成功率を80%以上に上げる、などの評価指標が考えられます。また、個々人のフィジカル強化が必要だと考えれば、所属メンバー各人にシュート練習100本/日やスクワット200回/日の実行(今どき、プロの世界でこのようなスポコン指標を追いかけないとは思いますが・・)など、成果が見込める評価指標を設定して実施状況をモニタリングしていくことになります。
同様に、もう一つの重要成功要因として「サポーターの活性化」を掲げ、そのKGIを観客総動員数80万人と設定しておりますので、この80万人を達成するために会員数(ファンクラブや後援会)の目標や関連するチラシの配布、会員向けWebサイトの訪問数などの評価指標を設定しています。
なお、こうしたKPIを検討する際には、KGIの達成と強い関係性・相関性があり、コントロール可能な指標であることを考慮して設定することが肝要です。と言いますのも、KGIの達成に寄与せずマネジメントの難しい指標であれば、それは適当であるとは言えず、成果につなげられない可能性が高いからです。勿論、最初から最適な指標を設定できるとは限らないため、これらの指標を継続的にモニタリングしていきながら、適宜、見直しや調整を図るなどの柔軟性や継続性が求められます。
目標からの逆算思考で、案件の創出・獲得シナリオを検討すべし
マーケティングやセールスに関連する施策を実行する以前に、目標達成のシナリオを想定・設計しておくことは当然重要なことです。また、そのシナリオ通りに進捗しているかを継続的に把握しつつ改善策を遂行していくためには、プロセス・マネジメントの導入と仕組み作りが求められます。
例えば、Web問い合わせに対する営業対応を想定し、その受注数の目標を12件に設定しますと、各プロセスの想定転換率(遷移率)からWeb経由の問い合わせが100件必要だと算出することができます。案件化率や受注率などの転換率を計測してきていない場合は、これまでの実績や全体の組み立てから総合的に判断して当初の目標値を設定すればよいでしょう。(以後、こうした評価指標の断続的な見直しは必要となります)
同様に、目標からの逆算思考によって商談経路ごとの案件創出・獲得シナリオを考えてみましょう。
ここでは理解を促すためにシンプルにしておりますが、それぞれの経路から案件を創出するには複数の指標(アクション)をKPIとして設定できるため、目標達成を実現するための貢献活動を把握しながら、日々のマネジメントに活かしていくことが肝要です。例えば、年間で必要な受注数を100件とした場合、その30%をWeb経由で獲得するシナリオを想定したとします。そして、それぞれの想定転換率(受注率・案件化率)から、年間で600件のWeb問合せが必要だと算出されます。また、このWeb問合せにおいては、オウンドメディア(自社で保有するWebサイト)への流入以外に、リスティング広告などの認知施策による経路も考えられますので、こうしたプロセスを意識した目標達成のためのシナリオを設計しておくのです。
こうして、早い段階でシナリオとのギャップ(問題・課題を内包)を掴むことができれば、
- どのプロセス(活動)に問題・課題がありそうか?
- 把握できた問題・課題を解決するための対応策は?
- 当初の目標や評価指標の設定に問題が考えられる場合はシナリオを見直す
などの打ち手(改善策)を継続的に講じることが可能となります。
特定の営業シーンにおけるKPIマネジメントを考えてみる
マーケティングやセールス活動における一連のプロセスの進捗や目標達成の状況を定量的に把握・分析することで、肌感覚で掴んでいた課題やその優先順位を明確にすることができます。この段落では、特定の営業シーンにおけるKPIマネジメントを考えてみたいと思います。ちなみに、KPIマネジメントとは、適切にKPIを設定して最終目標の達成に向けたプロセスをマネジメントしていく手法のことです。
例えば、インサイドセールスによるアウトバウンドコールのシーンを考えてみたいと思いますが、図に示したように、予め用意したターゲットリストに対して電話によるアプローチを行い、お客様のニーズや課題を確認しながら必要に応じてアポイントの獲得を試みます。アポ獲得以降は、フィールドセールスへの送客により、個別の提案活動によって案件化させ、受注を目指すことになります。
そして、各プロセスにおける目標設定(転換率など)を行い継続的にモニタリングしていく中で、例えば、お客様のニーズや課題を把握できた割合にギャップがある場合は、
「(コール対象の)リスト抽出の精度を改善できないか?」
と考えられるでしょうし、アポ獲得に至る割合にギャップがある場合は、
「アポの獲得率を改善できないか?」
と考えられ、設定したKPIを改善するための手立てを検討することになります。
具体的には、ターゲットリストの精度向上、つまりお客様の検討度合いを測るために、近年注目を集めているインテントセールス(顧客の行動データや検索履歴から興味関心の対象やニーズを特定し、効率的かつ効果的なアプローチを試みる営業手法)の実践や、浸透しつつあるMA(マーケティング・オートメーション)のスコアリング機能を活用するなど、幾つかの手段が考えられます。
また、アポの獲得率を改善するには、先述したターゲットリストの精度向上にも関係しますが、電話の時間帯やトークスクリプトの見直し、あるいは電話を終えた後に送付するフォローメール本文の標準化や添付資料の改変など、様々な観点で改善策を講じることができるでしょう。
さいごに
本記事では、ビジネスにおける、あるいはマーケティング/セールスにおける目標達成を実現するために、達成・評価指標(KGI/KPI)を適切に設定し、継続的にモニタリングしながら都度明らかになる問題・課題に対して改善策を打っていくことが重要であることをあらためて確認しました。
こうした達成・評価指標(KGI/KPI)を精度よく、かつ余計な手間をかけずにモニタリングしていくためには、やはりITツールの利活用は欠かせないものです。例えば、商談経路ごとの案件化率や受注率など、各営業担当者から案件管理用のExcelを提出させてマネージャーがその集計作業に終始するなど、時代錯誤も甚だしい状況だと言えます。こうした状況には、CRM(顧客管理システム)やSFA(営業支援システム)の導入検討が求められますし、BtoB企業におけるデジタルマーケティングには、MA(マーケティング・オートメーション)の利活用が必須になりつつあります。
こうしたITツールの利活用は、業務の効率化をはじめ、組織変革のトリガーになり得るものだと考えておりますが、あくまでも目標達成や課題解決のための一手段として捉え、各企業の取り組みを加速させて頂きたいと思います。
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